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進化。

公開日:2023年10月1日更新日:2023月10月01日
カテゴリ:感覚のはなし, 焙煎の味づくりのこと。, 良質さのお話。

進化。

これはコーヒー焙煎の進化のお話し。

中点を高くすると酸味が登場するので、より良質なコーヒー豆の場合には中点を高くしたいのだが、あまり中点を高くし過ぎると、今度はボリュームが登場しなくなり味は平坦になってしまう。
甘さは中点を低くした場合に多く登場するが、あまり低くし過ぎると今度は茶色がマットに登場し、そしてローストの甘さはザラついてきてしまうので、一番シンプルな考え方では、両者のバランスが取れるところが設定の落とし所になることは理解できる。
これは単純に中点だけを考えた場合の設定の捉え方になるが、中点は味づくりの骨格の部分でもあるので、中点を考察することはローストにおいてとても重要なことである。

だが、ひとつの設定だけを考えて取り組んでいると、目指す味づくりに手が届かないことに気づき始める。
それをどうにかしようと考えた場合に、フレーバーから焙煎機の特徴が見え始めてくる。
それが焙煎機それぞれの特徴である熱伝導の割合である。
焙煎機の蓄熱から伝わる熱量の割合と、熱源から伝わる熱量の割合によって登場するフレーバーが変わるからだ。

これは、焙煎機の持つ特性でもあるため、単純なローストを考えた場合には、焙煎機を買い換えることが一番手っ取り早く、多くのロースターは思い描く味づくりのために焙煎機を変更したりする。

しかし、ボクの場合は「まだこの焙煎機を使いこなせていないので、使いこなせれるようになってそれでも思い描く味づくりが出来ないと理解したら焙煎機を変えよう。」
そう思って取り組んできた。

すると、フレーバーの中からローストと結びついて登場しているフレーバーが見えるようになってくる。
そのローストと繋がりやすいフレーバーは、ローストによってコントロールができる存在でもあることに気づく。
そこに気づくことが出来れば、それをコントロールするために、どうすれば良いのかを取り組んでいけば良いのである。
それらが理解できるようになる頃には、酸味に登場しているフレーバーとローストによって登場しているフレーバーからコーヒーは成り立っていることがわかるようになってくる。
すると、その酸味のフレーバーとローストのフレーバーのバランスが味づくりであることを理解する。

ローストでの味づくりを思い描くようにコントロールしようと取り組むと、時代の流れの中にある理論や技術には、ボクが思い描く焙煎の論理は存在していないので、自分で築き上げるしか手段が無いことを理解することになる。
なので、自分が求める味づくりのためにいろんなことを考えながら取り組んできた。

まずは、偶然発見した技法から、その可能性を追求してきた。
それが証明されることになったのは、「JCRC 2018」の予選であった。
競技会は、年々によってレギュレーションが変更される。
2018年の予選大会は珍しく、大会側から生豆が郵送され、その生豆を各々の焙煎機でローストをし、期日指定でローストした豆を送り審査されるものであった。
普段から使い慣れている焙煎機でローストをするため、焙煎機の性能の差は生じるものの、使い慣れている焙煎機でローストの繊細な技術を施すことができる予選であった。
その予選で、決勝の6名の中に入れたことは、それまで取り組んできたローストの技術を評価されたことなのだと思い嬉しかった。

2018年の決勝大会の出会いから、技法を理解する探究が始まった。
技法はあくまでも技法であることが理解できるようになると、技法を使いこなすための感覚こそが大事であることに気づけるようになった。
感覚は目線であるので、他人の目線を自分のものにするために取り組むことを考えるようになった。

そして現在の技法にたどり着くことになった背景には、美しさの成り立ちから逆算して、味づくりを整えるという手法を身につけた。
これは、感覚が整ってきたことで可能になった技法で、ローストの設計図は論理的に分析をしてある程度の設計図までは頭の中で描き、2回目以降のローストでは初回のローストをカッピングをし、そのフレーバーから感覚で味を整えるという手法である。

この手法を自分のものにするためには、日本画の美しさとその技法が成り立ちの理解の学びにとってとても相性がよいことに気づき、偶然近くに在った「秋野不矩美術館」に足を運ぶことが多くなった。

それは秋野不矩さんの技法による彩色の成り立ちを自分なりに考えることで、それをローストに当てはめることで、コーヒーの味づくりに活かすという考え方だった。
それが出来るようになったのは、秋野不矩さんの絵から「光の表現」が見えるようになったことでローストが進化した。

素晴らしいと評価される画家の絵には、色の三原色を使って表現をしているのに「光の表現」がなされていることを感覚として理解できるようになったからだった。
これはテイスティングで脳裏に光の色が認識できる人であるならば、ボクの述べていることに頷けるはずであると認識をしている。

それら取り組みがあったことで、現在は自然の中に存在する美しさのイメージから、それをローストで表現したいと考えるようになってきている。
それが、先日すこし話しをした、夕焼けのローストなのである。

美しさに対する目線が変われば、表現も自ずと変わる。
なので一番に大切なことは、いろんな人の美しさに対する目線を学ぶこと。
その中で、自分が一番に表現したいと思う美しさを表現すればよいのだから。

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