香茶屋
MENU

読み物。

Blog

ビール離れと、ブレンド技術のお話。

公開日:2022年6月22日更新日:2022月06月24日
カテゴリ:良質さのお話。

ビール離れと、ブレンド技術のお話。

昨晩とある大手ビールメーカーが新しい商品の発売を発表していた。
ビールの消費量が落ちていて、20代〜40代のビール離れが進んでいて、その需要を取り戻すための新しい商品らしい。

以前にもブログで書いたことがありましたが、ボク自身もずうっとビールが好きで晩酌をしていた人でしたが、新しく発売される商品だけでなく、既存の商品も味づくりが偏り、ボク自身が美味しいと思えるビールが無くなっていってしまったことで、そこまでしてビールを飲まなくてもいいなと思い、それからアルコールすら飲まなくなってしまった。

大手だとマーケティングやら、消費者からの声などを聞いて分析をして取り組んでいると思うのですが、なぜ?ビール離れが進んでいるのかがわかっていないのだと思います。
ボクはずうっとテイスティングを学んできた人間なので、「苦手な人が求めているのは、そっち側の味づくりではないんだけどな」と思いながら、新商品のビールとか、市場のビールを今まで飲んできて思ったことでした。
そして、ビールが苦手な人や、あまりビールが好きではない人の「苦手な部分」の分析を勘違いしているようにしか思えてなりません。

簡単に言えば「キンキンに冷えた状態の美味しさを求めすぎ」なのです。
なので少しぬるくなってくると「甘ったるく」なってしまうために、クドくて1杯飲むのが精一杯。
要は、華やかで甘すぎる。
この華やかさと甘さは、麦芽のローストのクドさだと分析をしています。
その麦芽のローストが強いために、ホップの爽やかさが全然活きてこない。
まぁ、自分で作っていないので、言いたいことが言えるのですけどね。

アイスクリームが溶けたものを飲んだことがある人なら気づくと思いますが、キンキンに冷えたもので甘さを感じさせるためには、かなり甘くしないといけないのです。
すると、ぬるくなるともう甘ったるくて飲めたものではありません。

なら、どうするのか?
甘さがあったとしても、余韻のフィニッシュでは爽やかさを感じさせるものが、もうひと口飲みたくさせるのです。
しかも、フルーツの爽やかさです。
ビールなら麦芽やホップの苦味をきちんと良質なフルーツの柑橘系の皮ような苦味を登場させるようにすれば良いのです。

現在では、苦味や酸味を悪者扱いし過ぎる傾向にあって、考えなければならないのは、「良質な苦味」と「良質な酸味」を理解することで、そしてそれらをきちんと表現することです。
苦味や酸味を登場しないようにして「飲みやすく」する。
飲みやすさが、感動する美味しさのはずがありません。

スペシャルティコーヒーの定義にも記載されていますが、コーヒーの良質さとは「”爽やかな酸味”特性があること」なのです。
コーヒーもローストによるけれど、ビールもローストによる味づくりの部分が大きいので、今のビール市場の味づくりの流れは「苦手な人が美味しいと思える味づくりになっていない」のだと感じられます。
なので、好きな人目線の商品と、苦手な人目線の商品とを完全に分けて商品化した方が良いのだと思っています。

ボクはコーヒーのローストをする人間なので、ビールの麦芽のローストの味づくりも見てしまうのですが、ローストが華やかすぎることと、余韻に爽やかさが無いために、その甘さがしつこくてクドいのです。なので、液体の色も華やかで見た目からも、もう飲みたいと思えるビールが今のビール市場には無い。
そして、アルコールは糖化もしているので、ローストの甘さと糖化した甘さで、更に甘さがクドい。
せっかくのホップの爽やかな酸味と苦味が活きていないわけです。

ただし、麦芽のローストを浅くしてしまうと、ローストの甘さが登場しなくなってしまうので、そういう問題を解決するためにブレンドの技術があるのだと考えています。
異なるローストを施したもの何種類かを「ブレンドすること」で、ローストの甘さはあるけれど、余韻に「爽やかさを感じる」ものが登場するようになる。
すると、冷たいときも、そしてぬるくなってきてもフルーツ感のある爽やかさがあることで、もうひと口飲みたいと思える美味しさが登場するのだと分析をしています。

実は、これ当店の水出しアイスコーヒーのブレンド技術でもあります。
意外と、ビールとコーヒーは似ているところがあり、コーヒーが苦手な人も意外と多いのです。
ですが、ボク自身がコーヒーが好きではない人なので、コーヒーが苦手な人の気持ちがわかるのです。

まぁ、簡単に言うと、苦手な人は「嫌な部分が見える」ので、その嫌な部分が登場していないものが受け入れてもらえる。
ずうっと良質な美味しさと向き合ってきたから言えるのですが、「飲みやすさ」と「甘さ」が良質さではありません。
「爽やかさこそが、良質さ」なのだと今なら言えます。
そして、苦手な人たちは、嫌なところを感じられる人たちなので、良質なものならば美味しく感じられる人たちなのです。

ただし作り手が、良質さと、飲みやすさを履き違えしていると、間違った商品を作ってしまう。
コーヒーの市場も、ビールの市場も、良質さを勘違いしているようにしかボクには思えない。

そして、好きな人たちは、苦手な人たちが苦手だと思う部分を好きだったりするので、両者に受け入れられる商品にするのは難しさがあるのだと思う。

学ぶ。

Online Seminar

香茶屋では、店主である私が歩んできた道を分析し、感覚が成長していく歩み方を伝えてゆくことで、正しいロジックのもとで各講座の「学ぶ。」が運営されています。

オンラインセミナーの詳細へ

読み物。

Blog

© kaori-chaya